ノルウェーは平和で牧歌的で中産階級が多くて犯罪がない……というイメージがありますが、激しいブラックメタルの生まれる土壌でもあります。 ブラックメタルは一般的に反キリストを大きなテーマとして掲げています。 その中にダークスローンというバンドがいました。ブラックメタルの魁で、商業的にも、音楽的にも、思想的にも成功しました。
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ノルウェイ。オスロ。 ダークスローンメンバーのフェンリズ「ノルウェーの人間はバス停で2メートルも開けて並ぶ。国民性だ。」 「バーズムの製作した曲に完全に惚れ込んでしまった。あいつはすべて一人で作っている。ブラックメタルの申し子だ」 「メイヘムは俺にとって最高の存在だ。
活動は84年ごろ。最初のブラックメタルだ。ユーロモスの開発した演奏法がブラックメタルの基本だ。」 「ブラックメタルのシーンは次第に世間の注目を集め始めた。シーンの人間は派手で商業主義に走りたくはないと思っていいた」 「バーズム」のカウント・グリシュナッグ(本名ヴァーグ・ヴィカネス)はトロンハイム重犯罪刑務所に服役している。 ダークスローンが音楽を追求する一方でバーズムは思想に走っていった。バーズムは、物語や叙事詩をモチーフに曲を作り続けた。
現役時代は音の割れているマイク、歪んだ小型のアンプ、セッティングもしていないドラムで曲を作った。 服役中の今でも、独房内に小型のシンセを持込曲作りをして、販売している。 「キリスト教はヨーロッパの文化、その集大成アレクサンドリア図書館を粉々にした。現代の諸悪の根源はキリスト教なんだ。
アジアもアフリカもすべてキリスト教が壊しに来る」 「ノルウェーではオーディン、トール、フロイアが神様だ。洗礼はヒユダヤ人異教徒を殺す儀式なんだ」 「境界はもともと丘の上に立ち、先祖たちは太陽を祝福していた。キリスト教徒はそれを移動させた。石で作られた十字架を作り、勝手に自分たちの文化を押し付けてきた。なぜノルウェーの人間がそれを尊ばねばならないのか。人々の目を覚ますためにやったんだ」 ユーロニモスの結成したインナーサークルはグリシュナッグの主導で犯罪集団になってしまった。グリシュナッグは民族主義で、ナチズムに傾倒しているようになっていった。ナチズムとは、自分たち以外の民族は下劣で、ユダヤ人を始めとした民族を排除していこうという考え。 インナーサークルに集まった若者たちは、暴力に走り、しまいには歴史あるファントフト・スターヴ協会を燃やして当局から目を付けられてしまう。しかし、若者たちは「誰が最も邪悪か?」という競争で、更に行動を激化させ、メジャーなミュージシャンを嫌い、バンドのバスを横転させ、メンバーの家を燃やすなど次々に事件を起こしていく。
グリシュナッグはただのメタル野郎と一緒にされるのが嫌で、新聞のインタビューを受けた。「我々は事件の背後にいるが何もしていない。」その後記者は記事にする前に警察に行った。グリシュナッグが「我々が燃やした!」と自白したことになり、逮捕される。しかし、後に証拠不十分として釈放。それからも、なん件もの犯罪を行う。世間の人々の注目が最高になった。人々は悪魔崇拝者が協会を燃やしている!と騒ぎ立てることになる。
メディアはあることないことをかきたてるようになった。それを見たファンたちが犯罪を模倣するようになり、協会に落書きし、燃やす事件も出てきた。 レコーディング費用未支払いの問題や、アングラシーンにこだわるためバーズムの活動に何色を示していたユーロモスとメジャー契約をしていたグリシュナッグの関係は悪化していた。ある日、ユーロモスがグリシュナッグを誘拐し、森で殺す計画をしていたという噂を聞き、間に受けたグリシュナッグは、オスロまで車を飛ばしユーロモスを刺殺してしまう。 これにより懲役21年を言い渡され、ずっと服役中。 この事件を切っ掛けにノルウェイのブラックメタルシーンは下火になっていく。(世界では少しずつ展開されている。)
メイヘムのヴォーカリスト、デッドはステージ初の死化粧をしていた。ステージ上で自傷行為を行なった。ブラックメタル世界では大きな存在だ。 デッドは精神的に不安定で、ごシックな空想の世界に生きていた。 デッドのショットガンの弾が切れていたので、グリシュナッグは弾丸を贈った。そしてデッドは自らにその弾を放った。ユーロモスが最初の発見者で、頭蓋骨の周りに脳みそが飛び散っていた。ユーロモスはそれをみて、カメラを取り出し、撮影した。
その写真を「ドーンオブザブラックハーツ」というアルバムのジャケットに使用した。 ユーロモスはヘルヴェテというレコードショップを作った。壁一面のレコード、武器、頭蓋骨。独特な感性を持った若者たちがそこにたむろし始めた。 そこで働いていた田舎から出てきたファウストが、レイプをしてきたゲイのアンドレアッセンをリレハンメルの郊外の森で殺した。仲間たちは彼を誇りに思った。 ノルウェーでは平凡なものが興味を集める。
死化粧などはムンクに通じる。ブラックメタルとムンクらが持つ極端な不安感は共通するのかも知れない。 ノルウェーには少数の原住民がいて、そこに大勢のゲルマン民族がいた。ゲルマン民族にしゅうきょうはキリストに潰され、元々あった宗教はペイガンと呼ばれるようになった。
ペイガンは自然崇拝、多神教の信仰。キリスト教はペイガンは「田舎」とバカにしはじめ、更には「アイツらは悪魔の使い、魔女だ!」と差別する様になってきた。その抑圧からブラックメタルが産まれ、協会を破壊するようになっていった。