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ひきこもりミュージシャン「ノリアキ」とは何だったのか-1-

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ゼロ年代半ば、ネット発のミュージシャンのさきがけとして、youtubeから突如として現れた、カリスマ「ノリアキ」。
活動停止を表明した現在でも、ファンを増やし続けるアーティストだ。
その道程を記録してみたい。



浮ついた、信念のかけらもないB系ファッション、度の強いメガネと表現に乏しいマスク、贅肉も筋肉もない無機質なガリガリボディ、タバコ2本吸い、そんなルックスでパラパラを舞うという二重の異化効果。鮮烈なビジュアルショック。見え隠れする「やらされてる」感。
ノリアキがPVをアップした当時のyoutubeは、H264も対応していない荒い画質だったが、俺達はそこにリアルを感じた。
web2.0が高らかに歌われていた時代、ノリアキは突如現れ、今までにないカリスマ性で人々を魅了していった。
流行の移り変わりの早いネット文化に於いて、ノリアキは未だtwitterやyoutubeで語り続けられている稀有な存在である。




ノリアキの才能を見出した水野
まずはノリアキというダイヤの原石を発見し、丁寧に磨き上げた人物である水野敬也のブログから、ノリアキに関するエントリーを集めてみた。
水野敬也のウケる日記/後輩募集
水野著ウケる技術に感銘を受けていたノリアキ。

色々と考えた結果ですが、私、水野敬也とその友人であり、ネットラジオのパーソナリティーを務める抹田は、このたび後輩を募集することに決定しました。

この募集に応募したことにより、彼の人生は180度回転することになる。
(引用中に出てくる抹田は後に「温厚な上司の怒らせ方」等の監督でブレイクする古屋雄作)

水野敬也のウケる日記/後輩オーディション「のりあき」

高橋典彬(たかはしのりあき) 21歳 
ノリアキがオーデションに訪れた時の様子。まだ穢れを知らない、初々しい表情をしたノリアキの素顔を見ることができる。無機質であり、バカバカしいことにも愚直に取り組む様子が後輩肌むき出しで、面接官2人の心をガッツリキャッチ。
後輩オーディションにトップで合格する。

水野 「彼……いいね」
抹田 「いいバックグラウンド持ってるね」

デビューライブ
水野敬也のウケる日記/ノリアキ単独デビューライブ
水野敬也のウケる日記/ノリアキ単独ライブ直前映像
残念ながらこのデビューライブのレポートは探し出すことができなかった。
しかし、このタイムスケジュール…。。

1:00 バーベキュー開始

1:30 ノリアキのHIpHopダンス
(場を温める意味でノリアキにダンスに臨んでもらいます)

2:00 ノリアキの瓦割り

2:30 「君のすべて」 作詞作曲・ノリアキ

3:00 ノリアキのコーラ1.5ℓ一気飲み

3:30 「俺がノリアキだYO!」 作詞作曲・ノリアキ

4:00 ノリアキの川渡り

4:30 「2つの太陽」 作詞作曲・ノリアキ

未発表曲や「おい後輩、なんか面白いことやれ」的な幕間、是非見てみたい……。




水野本格始動を決意……だが……
水野敬也のウケる日記/ノリアキ武道館へ行く

ノリアキはミュージシャンとして武道館を目指します。
本来ミュージシャンという職業はエゴが強いアーチストですが、ノリアキはミュージシャンになろうと思ったこともなければ興味もない。しかし、今回の単独ライブでは、僕と抹田の「命令」により作詞作曲して歌ったわけです。
これは、通常のミュージシャンのあり方と対照的です。

ノリアキのデビューコンサートに確かな手応えを感じた水野。このノリで武道館を目指すことを決意。
webデザイナーのボランティアを募る。
しかし……。
水野敬也のウケる日記/ノリアキの反乱

実は、折り入ってご相談したいことが。

あの…髪を切らせていただきたいのですが。

ノリアキが先輩に初めての口答えをする。プロデュースする側としては、くるぶしまである髪を振り回しながら歌って欲しい!という目論見があったみたようだ。しかしサラサラストレートなら絵になるけれど、写真の通りノリアキの髪はクセッ毛で量も多く、頭部から雑草が生えているようになってしまい、日常生活を送れなくなってしまったようだ。そこで勇気を出して先輩2人にヘアーカットをしても良いか進言をするに至った。
しかし水野・抹田からは、「まずは散髪申請書を提出せよ」と言われる。

その頃の写真かは分からないが、スカイフィッシュの頃でしょうか。
ノリアキ


犯行・失踪・本当のデビュー

水野敬也のウケる日記/デビュー
ノリアキはあろうことか、先輩に無断で髪の毛を勝手に切ってしまい、かなり叱責されて、失踪してしまう。

「あのさ、俺たちがなんで髪を切るなって言ってるか分かる?一言で言うとそれって「演出」なわけ。お前の、類稀なヴィジュアルを生かして売って行かんとしてる俺たちがいるわけよ。俺たち判断として、「お前の髪の毛をくるぶしまで伸ばしたら、何らかの形で価値が出る」そう判断しての、散髪禁止令なのよ。お前は俺たちの掲げる一億円プロジェクトに賛同してここにいるわけだよね。お前がお前判断で髪切ってたら、いつまでたっても一億円貯まらないよ」
ということを、僕と抹田は
● 終始真顔で
それは、もうシゴキで有名なあの柔道部の3年が1年に対して説教する勢いで持って彼に言ったわけなのですが、
その辺りから、彼が平たく言うと、僕たちに「びびり」初め、そしてついに、
来なければいけないネットラジオの時間に連絡が取れなくなり、何度携帯に電話しても留守電という
いわゆる
● バックレ
に出たわけなのです。

髪の毛のウザさに負け、水野たちが願う武道館デビューへの熱意を踏みにじってしまったノリアキ。
「本人がやる気ないなら、まぁ仕方が無いか」とノリアキプロジェクトは解散に向かっていた。
だがある日、水野がノリアキに貸しっぱなしにしていた資料がどうしても必要になりメールを送る。

水野です。

お久しぶりです。元気してる?

あの日以来だけど、ちょっと気になってね。

とりあえず、僕がノリアキに伝えておきたいのは、
あの時君が来なかったのは全然怒ってないし、人はやりたいことをやって生きていくべきで
やりたいことはやらなくて良いと思う。今回はたまたま縁がなかったけど、また一緒に遊べたらいいね。

あ、そういえば思い出したんだけど、君に貸してた恋愛マニュアル本あったよね?
あれ、ちょっと仕事で必要になったから時間あるときに返してもらっていいかな。

わざわざ持ってくるのが面倒だったら、↓の住所に送ってもらえればよいから。

東京都渋谷区○○○○○○○○○○○○○○

よろしくお願いしますー!

PS.
また今度君の車でドライブ行きたいねっ。

そして、ノリアキの返信

色々とお話したいことがあるので、直接おうかがいしてもよろしいですか?

水野のもとに訪れたノリアキは言う。
「ミュージシャン…やらせてください」
「もう一度やらせてください」
本当の「デビュー」はここから始まった。

実はこの事件以前にもノリアキが音信不通になったことがあった。
水野敬也のウケる日記 水野虫

どうも「ウケる日記」の存在が親にバレ、大激論を行ったらしい。

ノリアキの親
「あんた、「ウケる日記」っていうウェブサイト見たよ。どうなっとんの?お前は!?ちゃんと大学行って勉強しとるんと違うの!?そんなバカなことやらすために仕送り送っとんのと違うんやで!」

ノリアキ
「俺は好きでやってんだって」

ノリアキの親
「好きでやってるってあんた、水野って人にバカにされとるだけでねぇの」

ノリアキ
「バカにされとるように見えるかも分からんけど、そういうわけではないんだって。『いじられとる』だけだって。」

ノリアキの親
「そんなもんバカにされとるのと同じだわ」

ノリアキ
「同じでねぇって!」

ノリアキの親
「あんた騙されとるだけだって」

ノリアキ
「騙されてねぇんだって。水野って人はすごい人なんやって」

ノリアキの親
「すごい人やったらもっと有名なはずじゃないの」

ノリアキ
「あの人が有名になるのは時間の問題やって。今はまだ『知る人ぞ知る存在』なんやって」

ノリアキの親
「・・・。」

ノリアキ
「今は、まだいじめられてるように見えるかもしれんけど、絶対大きな花火打ち上げるって。打ち上げて見せるって」

ノリアキの親
「(あかん、この子、新興宗教にハマッとるわ…)」

というわけで、ノリアキは曲作りを全くやっていないくせに、親の前で「花火を打ち上げる」と言ってしまったばっかりに、引っ込みがつかなくなって、僕と抹田に会いにきて、泣きながらこう言った。

「ミュージシャンに、なりたいです」

しかも、泣きながら、である。

この通り、水野へのノリアキに対する忠誠心は本物だったが、尋常ではない髪の毛のウザさが彼の気持ちを一時乱してしまったのだ。

失った信頼を取り戻すため、ノリアキは本気を出す。
フェイクのイロモノとして売り出されようとしていたノリアキが、リアルの皮を被ってフェイクの皮下脂肪をつけたリアルでセクシーなミュージシャンになった瞬間だ。ややこしいか。だがしかし、ノリアキというミュージシャンは実に複雑なのだ。
一種のネタ、パロディとして笑いながら聞いていた楽曲が、聞いていくうちに心をうつ名曲だと言うことに気がつく。
しかし歌っている人間は薄っぺらいガリガリノリアキ。晒し者の山形チェリースタイルノリアキなのだ。
リスナーはこの複雑な演出に戸惑いつつも魅了されてしまうのだ。



水野はノリアキデビューに向けて、ノリアキがかつて裏切ってしまった者達を説得するため奔走する。
社長であるマミさんの元に向かった場面が実に印象的に記されている。

「ノリアキがこういうことを言い出していますがどうしましょう」

ということをふっと漏らしたのですが、

その時マミさんの大きな目がさらにくわっと見開きサンサンと輝きだしたかと思うと

「やりましょう!」

と、シャウトしたのでした。

彼女のあまりの豹変ぶりに、一体何が起きたのかよく分からくて呆然としていたのですが、
そんな僕の横でマミさんは言いました。

「この企画はやりましょう。いや、やるべきです!」

一度は裏切ったノリアキを、なんだかんだで迎え入れる人々。雨降って地固まる。
笑いを挟んだ文章の中に、ノリアキのヤル気を信じる気持ち、期待する気持ちが伝わってくる。厳しくもとても温かい水野、マミ社長。
そして、水野の自らおもしろいと感じたものしか作らないというスタンスでプロジェクトを進めている点に、私はおおいに感動した。
それを作った僕たちの口は誰よりも笑っていたい。
自分が楽しんで作れなかった作品が、どうして人の心を打つのだろうか。

残念なことにスタジオ録音したものの、CD未収録作品の「DON’T CUT ME」という曲がある。
この時期の自身の痛々しい心象を書き表している。

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DON’T CUT ME

「デキテマセン」 何度言ったのかな
「ジカイコソハ」 出来んの? 出来ないの?
「ガンバリマス」 何度言ったのかな
「ジカイコソハ」 信用できないよ 切るよ?

そう言うのもモットモですが
そう お願いするよ 僕をキ・ラ・ナ・イ・デ

Please, DON’T CUT ME!
ミステナイデ! 明日の自分は違うから
僕は生まれ変わるから
DAKARA Please, please don’t cut me foever...

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ノリアキ再起の覚悟から程なくし、プロジェクトは本格始動する。
プロモーションビデオ撮影、スタジオ録音、webサイト、作詞などなど、一気に動くこととなる。


第二回へ続きます。

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